傷心日記

エッセイ。日々の出来事と本。週1更新予定

名刺代わりの小説10選 第1回 オーランドーと人間失格

つい報告したくなることがあり、予定より早めの更新となりました。

といっても、ほんとうにささやかなのですが……。

 

昨日ゴミ捨てに出た時のことなのですが、真っ赤に染まったドウダンツツジの葉にやわらかな金の入り日がさしこんで、素朴ながらも何とも表現できない美しさでした。

ああいう景色に出会えると、頬に冷たい風を受けてでも外に出た甲斐があったなぁと、しみじみ思えます。

 

さて今回は、ツイッターハッシュタグ、「名刺代わりの小説10選」で名前を挙げた本について詳しく書きたく思います。

ツイッター、とても気軽に投稿できてつい夢中になってしまいます。ただフォロワーはまだ全然いなくて寂しいので、趣味に合いそうならぜひフォローして、私の孤独感と承認欲求を満たしてください。

 

完全に余談ですが、私は人一倍承認欲求が強く、そしてそのことを誇りに思っています。人から認められたいと願う気持ちはごく自然だし、趣味とはいえ表現していく上で強力な武器になるはずです。もちろんその分振り回されやすいということも肝に銘じていますが……。

でもそれはお金が欲しいと思えなければ成功できず、さりとて金の亡者と堕してしまうのは人間にとって不幸である、といった話と同じだと思うのです。

過度に抑圧せず、さりとて身の丈以上に肥大もさせず、この欲深さという美点と向き合っていきます。

 

さて前置きが長引いてすみません。

まずはヴァージニア・ウルフの「オーランドー」。

ウルフで一番印象深く心の支えにしているのは「自分ひとりの部屋」なのですが、小説ということなのでこちらにしました。文学を正式に学んだことはないので理解できているかは不安ですが、純文学とファンタジーどちらの要素もあって、とても気に入っている作品です。

主人公が男性から女性に転身したあげく300年も生き続けるという設定だけでもユニークなのに、ウルフ独自の流麗かつ繊細な文体も加わって、

極上の一冊に仕上がっています。

フェミニズムジェンダー的な要素もあり、ある種思考実験的な面白さも味わえます。

 

そしてお次は太宰治の「人間失格」。定番すぎて、なんだか気恥ずかしいくらい。でもやはり、定番になるだけの実力が確かにあります。

ひたすら陰鬱な内容、お世辞にも性格がよいとは言えない主人公。けれど太宰のどこか甘やかな語り口と鋭い視点に魅せられて、ついページを繰ってしまいます。共感と反論のどちらをも喚起する、唯一無二の作品です。

 人間はこの主人公を自分だと思うものと、そうではない者の二つに分けられるだなんて言われることも。はたして皆様はどちらでしょうか?

私は自分だと思う側です。けれど不思議なことに、主人公と私の境遇に重なる点は、漠然とした自己と世間への嫌悪感をのぞけば皆無です。この主人公、かなりのお坊ちゃまなんですよね。なのになぜか嫌味がなく、つい同情してしまう。絶対周りのほうが大変なのに……。

似ても似つかぬ人間の心境に思いを馳せ、あまつさえ共感する。私はこのことに文学の面白さの一端を感じます。

 

この前別件で図書館のティーンズコーナーをのぞいたら、た行の作者の棚にこの本も置いてありました。でも、両隣は愛らしい少女が表紙のライトノベル。なんだか居心地が悪そうで微笑ましく、マスクの下でニヤニヤしてしまいました。

思い返せばファンタジー専門だった中学生の私に、文学の面白さを教えてくれたのがこの一冊でした。孤独な若者の魂を救い、代償にその人生を狂わせる。太宰はきっと時代を超えて、その手の作家の大筆頭であり続けることでしょう。

 

……この調子で書き連ねると途方もなく長くなりそうなので、ひとまずここで筆を置きます。独りよがりな文章ですが、次の更新分もお読みいただけるととても嬉しいです。

それではまた。